最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)160号 判決
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〔要旨〕民法第九五条が手形行為に適用ありとしても、錯誤による約束手形振出行為の無効は善意の譲受人には対抗し得ない。
〔説明〕約束手形の振出人が、右手形の被裏書人からの手形金の請求に対し「本件一〇〇万円の約束手形は、ラツセル車の修理代金一四五万円の一部前払のため約旨期限内に修理を完成することを要素とし且つこれを前提として振出し交付したものであるところ、右手形受取人の当時の経営状態において右期間内に完成することは客観的に不能な状態にあつたに拘わらず、振出人を欺罔したものであるのみならず右修理も結局他の業者により代金四九万円にて完成したものであり、代金額についても振出人を欺罔したものである」と主張した。原審はこれに対し「修理代金の額や修理完成の時期につき錯誤があつたとしても、苟も手形に署名した以上、手形行為者としてその責に任ずべきは当然であつて、この場合錯誤に関する民法第九五条の適用なし」として右主張を排斥した。上告理由は「手形行為も法律行為である以上民法第九五条の適用あり」とするにある。
手形行為に民法第九五条の適用ありや否やは学説上争のある問題であり、大審院の判例は積極説をとるものと解せられるが(大正一〇、九、二〇民録二七、一五八九条)、本判決要旨の点にふれているものは見当らない。その意味において此の判決は、(その理論的根拠を明示してはいないが)注意すべきものであろう。
(大場調査官)